住宅の不同沈下・地盤改良、自然災害による住宅被害の復旧工事等、住宅の基礎地盤の全てのご相談に応じます。WASC(ワスク)は住宅の基礎と地盤の専門会社です。

そこに住む人を守りたい

東日本大震災にともなうWASCからのお知らせ

弊社は「そこに住む人の生命と財産を守りたい」との想いで2005年に創業しました。
具体的には「常時、自然災害時の住宅の不同沈下防止と修復」です。
代表取締役高森洋は昭和46年から住宅基礎、地盤に関り、その後の宮城県沖地震以来、多くの自然災害被災地で調査、修復にあたってきました。これらを通じて感じたことは「地震の時、地盤は昔の姿に戻る」で、以後機会あるごとに言い続けてきました。

今に生き、今に尽くす。これ店名也、我の使命なり40年余自然災害に関ってきた高森は、今回の大震災の復旧修復に天命、使命を感じています。
このため今までの経験と実績の全てを今回の大震災に注ぎ、現地での取材、調査、修復相談などの生々しい状況をお伝えすると共に、弊社の責任で見解を述べさせていただきます。
このことによって微力であっても被災地の皆様方の復旧、復興に役立ちたいと願うものです。
被災建物の調査と修復設計を希望されるかたはご連絡ください。持てる力の全てをかけて取り組ませていただきます。

第6報:傾いた住宅を水平にするためには色々な方法があるが・・・4月18日

震災発生から1ヶ月が過ぎました。「液状化で被災した地域では修復できるのか?   
できるとしたらどんな方法が良いのか?」などを心配されている方々が大勢おられます。   
このため高森が数多く経験した「地震~建物被災~修復」の各工法の特長を説明します。

各工法の特長
  土質の適否 深部までの
施工可否
長期的な
安定性能
レベル修復
の正確さ
必要な
費用
近隣への
影響
 
A工法 全て可 地山N>20
までOK
大(安心) 正確 高い 微少な振動 安心できるが費用高額、
微少振動有り
B工法 礫土不可 -10mぐらい?? 正確 高い ほとんど無し 平坦地なら安心できる。
高止まりに注意
丘陵地はA、B工法が適する。そばに石垣、擁壁がある敷地での注入は難しい。
C工法 全て可 不可 疑問あり 正確 安い ほとんど無し 費用安いが地盤の見極めが必要
D工法 粘性土は
苦手
可能5~6m² 観察必要 微妙 きっちり施工すれば高い 擁壁を押し注入材が流出する可能性が大きい 住宅を施工した実績によって品質が異なる
E工法 正確 落ち着いた地盤ならOK
F工法 全て可 表土のみ 観察必要 正確 安い ほとんど無し 落ち着いた地盤ならOK。
軟弱土、液状化土実績有り
G工法 全て可 無処理 観察必要 正確 安い ほとんど無し 近年の住宅のアンカーボルトは長く、太く、多い。
この建物での実施は避けた方が良い。
H工法 粘性土は
苦手
2~3mまで 観察必要 正確 少し高い 注入材が流出する可能性がある
注:ここに記した注入とは薬液注入です。
工法1と工法2
工法3と工法4
工法5と工法6

第5報:さてこれからどうする?大きな問題

地震発生から1ヶ月が経過し、これから復旧、復興です。また途絶えている部材が間に合うようになれば全国的に新築工事も活発に着工されるでしょう。
ここで大きな問題が浮上しているように思えます。
5−1液状化で不同沈下した建物を修復する場合
被災地では道路が相当沈下しています。この道路の沈下によって下水が流れなくなったり、逆勾配になっている可能性があります。
道路のことを考えず住宅だけジャッキUPした場合、後日前面道路の修復~かさ上げが実施されたら住宅から公共下水へ排水できなくなります。
住宅をジャッキUPする場合、まず役所に問い合わせて道路のかさ上げの有無を確認すべきです。
5−2液状化しそうな地盤の見極め、液状化しそうな地盤への地盤対策が必須になります。
  • (1)法律では

    住宅の地盤については「平成13年7月2日国土交通省告示第1113号」において次のように規定されています。
    「地震時に液状化するおそれのある地盤、または(三)式に掲げる式を用いる場合においては・・・・(途中省略)・・建築物の自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことを確かめなければならない」要するに液状化するかしないか?を判断して、しそうな場合は対策を施しなさい・との意味です。

  • (2)近年の実態

    しかしながら絶対的な対策方法が無いため、一般的な不同沈下対策の「柱状改良」「表層改良」「小口径鋼管杭」などを実施してきたのが近年の実情です。

  • (3)柱状改良等(前記方法)を実施していた建物の被災程度はどのようであったか?

    この内容はしばらくすると把握できるはずです。しかしながら住宅会社、地盤補強会社が被災の実態を正確に公表するか否か?は疑問です。
    私が被災地を見た限り、多くの建物は「眼で見て分かる不同沈下」していました。

    地盤補強の有無と不同沈下の程度には少しぐらいの違いはあるかも知れないが、修復しなくても良い建物は少ないのではないでしょうか?

  • (4)これからどうすればよい!!
    1. 嘘を言わない
      「これから我々はどうしたらよいのでしょうか?」こんな質問が地盤補強会社の人からあります。
      そのとき私は次のように答えています。
      「絶対に嘘を言わないこと。
      ○△工法は液状化に対して大丈夫です・・など絶対に言ってはならない。
      液状化に対して効果があります・・と言う場合には誰にでも通用するその根拠を示すこと」
    2. 自治体が作成しているハザードマップを頼りにして液状化地域を判断しよう(無料)。
    3. 更に詳しい判断が必要な時には、それなりの地盤調査をして有無を判断しよう(出費=有料)。
    4. 対策方法    
      ア)ボーリング結果による小口径鋼管杭は、建物自体にはそれなりに効果があります。
      イ)その他の方法は何がしかの被害が生じることを説明しておく。
    5. 私は長年関ってきて一番に思うことは次です。
      • 地盤の液状化は簡単には止められない。
      • 造成段階で処置できないことはないが、投じた費用が莫大になり、買える宅地にはならない。
      • ましてや個人の資金で解決できるものではない。
      • 住宅の地盤補強方法は多くあるが、小口径鋼管杭以外はいずれも被災する。
        液状化しそうな地盤で小口径鋼管杭を施工しようとした場合、杭長さが長くなり費用がかなり高くなることを理解しておく。
      • このような実態を長年見て、関ってきましたので「液状化被災しても修復しやすい建物、構造」を以前から提唱してきました。
        (地盤と基礎100の疑問 PHP刊、高森洋執筆 27ページ)
        それは従来からの地盤対策をほどほどにして次を付加することです。
        修復用の鋼製土台設置+アンカーボルト頭部を触れる構造+継ぎ足しできるアンカーボルト+ジャッキを設置しやすい基礎断面(現在のスリット換気は疑問)
        しかしながら、「予めジャッキUPを想定した建物はユーザーの理解が得られません。また確認が降りないはず」との理由で20棟ほどしか実現していません。
        それはそうかも知れませんが、今回の液状化被災で避けて通れなくなりました。早急に住宅業界、行政一体となり、またユーザーも格好にこだわらず一時も早い実現を望みます。
  • (5)弊社では、当初は微力でしょうが
     「住宅の液状化被災を減らす研究会」を発足させます。

    同じことを考えておられる方々が集まり、情報と意見を出しあい、効果があること、効果の無いこと・・などを集約して「民間レベルで今すぐできることから実行する」を合言葉にして活動したいと思っています。
    具体的な運営内容はまだ決まっていませんが、参加を希望される方はご連絡ください。

第4報:浦安市の地盤の歴史と被災程度の違いを歩いて確認してきました

4−1エピローグはタクシーの運転手さんのつぶやき・・
3月14日、東西線浦安駅からタクシーに乗って南へ向かう車中、「駅の辺りはなんともないのだが、南に行くほど被害が大きい」と運転手さんが話されました。
このことが気にかかり、国土地理院から旧版地図を取り寄せて浦安市の変遷を確認してみました。
浦安市の変遷
東西線浦安駅の辺りは昔から陸地であり、その後南へ埋め立て造成された経緯が読み取れました。
4−2大正6年地図の陸地の最南端に立ちたい
昔からの陸地は本当に被害が無かったのか?
この思いから4月2日、ついに最南端の場所(上の地図の○印場所)へ行きました。
その後海側(南)へ歩いてみました。
古くからの陸地の街区にはほとんど液状化が発生していませんでした。
しかし古い陸地街区から次の街区、また次の街区・・と海側へ向かうほど被害が激しくなりました。  
「人が住んだ歴史、埋め立ての歴史」と被災程度が顕著に現れている地域です。
旧版地図の位置
旧版地図の○印のところが写真の※印の地点です。 旧版地図の位置
  • 古くからの陸地ではごく軽微な液状化が見られた古くからの陸地ではごく軽微な液状化が見られた
    古くからの陸地ではごく軽微な液状化が見られた
  • その後の埋立地住宅街区の区切りにある連続した小山。
    街区の区切りにある連続した小山。埋め立て地の端の堤防かも?根の強さをいつも感じる。
  • 入船(昭和の埋立)の南に残る堤防
    入船(昭和の埋立)の南に残る堤防
  • 典型的な液状化による不同沈下(富岡交番)
    典型的な液状化による不同沈下(富岡交番)

第3報:干拓~埋立地の潮来市日の出の被害はすごかった

3−1潮来市日の出地区
東関東自動車道の終点が「潮来IC」。料金所を出て左へ進むと「日の出2丁目~5丁目」この一体に被害が集中していました。
潮来市日の出地区
3−2被災地を歩いての思い
長年鍛えた高森の眼で見て回りました。
  • 歩いていて目に止まる建物の傾斜は10/1000以上。
  • 写真に撮って傾斜が分かるのが10/1000以上。
真っ直ぐな建物はほとんど見当たらなかった。 大阪に居ると浦安市の液状化がたまにTVで放映されます。 しかしここの液状化被災は浦安市に匹敵するか?もしくは大きいかも。
  • 噴出した砂噴出した砂
  • 道路の沈下≒1.0m道路の沈下≒1.0m
  • 折れた擁壁
  • 折れた擁壁土留め擁壁
  • 折れた擁壁折れた擁壁
  • 倒れた土塀倒れた土塀
  • 柱式バルコニーの壊れ柱式バルコニーの壊れ
  • 抜け上がり(日の出小学校)抜け上がり(日の出小学校)
3−3潮来市日の出地区
私が話しかけたO様宅は北東出隅へ向かって基礎がめり込んだため、溝を掘りシートを張って換気口から雨水が入らないようにしていました。

O様とのQ&A

O様Q: 余震で家は壊れないか?この場所で修復できるのか?
高森A: 平屋で長い建物なので本震未満なら壊れない。この場所で修復してOK!!
O様Q: どんな方法で修復したら良いのか?
高森A: 外壁に貼っている波板を外して、アンカーボルトを緩めて土台から上部だけ持ち上げる。その隙間にコンクリートを充填する方法が一番良いでしょう。費用も安いし・・。
  
潮来市日の出地区

こんな会話の後、気づいたのが写真の丸太。地震の時、地下から現れたとのこと。40年ぐらい前の干拓、埋め立て時の土砂流しのシュート(この地方では"どろじょうき"と呼ばれていた)を支えていた木杭だろうとのこと。O様の庭と前の畑、付近の家の庭にも出ていました。

  • O様宅の南には木杭が突如現れたO様宅の南には木杭が突如現れた
  • O様宅の南側の畑の木杭O様宅の南側の畑の木杭
  • 庭に現れた木杭庭に現れた木杭

第2報:地盤の液状化で不同沈下した戸建住宅の修復について/高森の失敗と成功です

液状化被災建物は元の形のまま沈みこんでいますので、上手にジャッキUPすれば内装は軽微な修復ですみます。
これは阪神大震災の被災地で多く手がけました。はじめは失敗もあり手間取りましたが、3棟目ぐらいからは計画通り施工できました。今となっては貴重な失敗の経験でした。
液状化地盤は通常と異なります。大事なことは次です。
2−1地盤について
①水位が高く細かい粒の砂地盤で液状化が発生します。
液状化によって水が抜けて、砂の組み合わせが以前よりしっかり密になっています。
②今回より大きな地震が来ない限り液状化被災は少ない・・と言われています。
③噴き出た水の影響で直後は軟らかいが次第に落ち着きます。
④液状化した地盤の下方に硬い地盤があるが、そこまでが深い。
これらを次の図に示します。
液状化
2−2修復方法の選択
阪神大震災、鳥取県西部地震、能登半島地震などで、高森は液状化で被災した住宅の修復に数多く関ってきました。その失敗から学んで確立したことをOPENにします。信用していただけるかどうか?は皆様のご判断にお任せします。
①不同沈下建物の修復にあたり、多く用いられる
「鋼管杭の押込みアンダーピニング工法」は
次の理由によってあまり適しません。
  • 地盤が砂質土であるため周面摩擦力が期待できない。
  • そのため杭の先端を深部の硬質層まで届かせる必要がありますが、そこまでが深いため押込めない。
②液状化された地盤は、地震の力で締め固められているので、
軽微・安価な注入では目的の層に注入できない。(これにこだわって失敗しました)
③液状化された地盤の表土は水締めされているので、
表土を支持地盤としてジャッキUPする工法が無難です。
これは次の2方法があります。
  • 土台UP工法(基礎はそのままとして土台から上部をジャッキUPする)
    土台UP工法
  • 基礎UP工法(基礎ごと建物をジャッキUPする)
    基礎UP工法
近年の住宅基礎にはアンカーボルトが多く、かつ長い。また床に色々な設計、仕掛けがされており、B工法の方が無理、無茶がなくきれいにジャッキUPできます。
2−3基礎UP工法についての注意点
  • (1)何も考えずにジャッキUPすると沈下します。
    • 基礎ごとジャッキUPでは基礎と地盤の縁を切るとき少なくとも60kNのジャッキ力が必要。
      このときジャッキ下に敷いている鉄板の面積は0.6×0.7=0.42m²程度が多い。
    • しかし砂地盤であるがゆえに地盤の支持力度が30~40kN/m2と小さい。
    • ジャッキ力60kN/0.42m²≒142kN/m²>(30~40kN/m²)×2(短期)
      この条件でジャッキUPを強行すると次のようなことになります。
      • ジャッキをかけても鉄板がめり込むだけでジャッキUPしづらい。
      • ジャッキUP時にめり込んだ箇所は、その後再び沈下しやすい。
      • 鉄板を少しぐらい大きくしても「142>(30~40)×2」は解消できない。
      ・・・・これらが私の失敗経験です。
  • (2)必ず地盤調査を実施しましょう。
    • 液状化地盤での基礎UPでは敷き鉄板下の地盤の支持力度が運命を左右します。
      それを確実なものにするためには次のことへの注意が必要です。
      (イ)修復工事前に必ずスウエーデン式サウンディング試験で地盤調査をする。
      (ロ)-2.5mまでの支持力度(qa)が50kN/m²未満の場合は地盤の強化が必要です。
    • 地盤の強化方法としては次の方法があります。
      敷き鉄板下の地盤に薬液(ゲルタイム調整できる注入材)を注入する(下左の図)。
      弊社が開発した「WASCシートパック工法(特許工法)」で施工する(下右の図)。
      本工法の原理は名古屋工業大学名誉教授 松岡元先生の研究(土のう工法)によるものです。軟弱地盤での構造物新設、斜面・法面の補強に使われており、その施工方法に手を加えたのがWASCシートパック工法です。興味のある方は下記へお問い合わせください。
      お問合せ:株式会社WASC基礎地盤研究所
      Tel:072-625-3630 Fax:072-625-3631
      E-mail:info@wasc-lab.jp
      地盤の強化方法
    基礎ごとジャッキUPしたら、当然のことながら地盤と基礎下に隙間が発生します。
    この隙間は必ず埋めることが必要です。埋めるために色々な材料を注入しますが、この注入材の中には注入から時間が経つと体積が大きく減るものがあります。体積が減る・・と新たな隙間が生じて、注入した意味が全く無くなります。
    このような注入材は絶対に使ってはいけません。

第1報:3月14日、18日「浦安市、千葉市」の液状化被災地に行ってきました

1−1被災地を歩いての思い
阪神大震災の芦屋浜シーサイドタウン、六甲アイランド、大阪市此花区、鳥取県西部地震の境港、能登半島地震の七尾市で見かけた液状化と同じでした。
道路に吹き出た砂は市役所が撤去していました。
ただ前記被災地よりも粒度が小さい砂が噴き出ていました。
水道が止まっているため給水車からの水を運んでいる人々を見ると大変気の毒でした。
杭を施工していた建物は「抜け上がり」、杭を施工していない建物(多くは戸建住宅、店舗)は傾いていました(これはごく当たり前です)。
被災地では道路の沈下が最大1.0mぐらい有るように見えました。
今回も液状化被災住宅で命を奪われることはありませんでした。
  • O様宅の南側の畑の木杭マンホールより低い建物!! 建物が沈下したのか?
  • 庭
  • 庭
  • 庭ブロック塀の倒れが目立つ

Copyright © 株式会社WASC基礎地盤研究所. All Rights Reserved.