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住宅用ベタ基礎wasc-Mat基礎

5. 基礎打継ぎ部の構造性能に関する確認実験

5.1 実験に至るまでの経緯

Mat基礎の普及拡販や試験施工現場への採用をお願いするにあたり、建築会社へMat基礎(図5-C)の仕上りや施工の流れ等の特徴についてプレゼンをさせて頂くと多いのが次の一言です。

「打継ぎ部分の被り厚がゼロに近いけど、構造強度は大丈夫なの?」

既存の住宅基礎のコンクリート施工方法は、大きく分けて次の2通りあります。 

  1. 一体打ち(打継ぎ無し) (図5-A)

    耐圧版とと立ち上り部のコンクリートを分けずに一気に打設
  2. 二度打ち(水平打継ぎ) (図5-B)

    耐圧版と立ち上り部のコンクリートを2度に分けて打設

それぞれに良し悪しある中で、最大の問題点として挙げられるのが打ち継ぎによる構造強度の低下です。
 一般論として 一体打ち>二度打ち と言われていますが、コンクリートを良好に打ち継ぐには、「打ち継ぎ面のレイタンスの除去」や「打ち継ぎ直前の散水」等の対策が必要ですが、それさえすれば強度差無く仕上がるのか、それとも差は出るのか、その中でMat基礎は両者と比較して同等なのか…
 仕上がった断面だけで考えると、断面形状や鉄筋量が同じであれば計算上の構造強度は全く同じ結果になるはずですが、実際の強度を確認した事例が今までありませんでしたので、実大基礎を用いて業界で初めて基礎の構造強度確認実験で実施しました。

図5 基礎コンクリート打設方法の違い

  • A) 一体打ち(打継ぎ無し)
  • B) 二度打ち(水平打継ぎ)
  • C) Mat基礎

5.2 実験概要

当初は自社での実験も検討しましたが、試験体の形状や加力方法等の指導を仰ぎながら結果の第三者性も確保するため、次の通り実施しました。

施設名称
大阪工業大学 八幡工学実験場 構造実験センター
所在地
京都府八幡市美濃山一ノ谷4番地
実施期間
試験体製作6月14日(月)~17日(木)、28日(月)、30日(水) 実験準備6月14日(月)~17日(木)、28日(月)、30日(水) 試験体製作7月28日(水)
実験8月2日(月)~6日(金)
担当教員
大阪工業大学工学部建築学科 宮内靖昌 特任教授
実験実務
シグマ・ガル株式会社(兵庫県尼崎市)
加力方式
① 曲げせん断、② 引抜き
試験体数
一体打ち(打継ぎ無し) B) 水平打継ぎ C) Mat基礎
各1体の計3体

5.3 試験体の形状

5.3.1 曲げせん断実験用試験体(図6)

  • 横筋は通常通り配筋し、縦筋はせん断破壊せずに曲げ破壊させるために、通常よりピッチを小さく、鉄筋径を大きくして製作
  • 打継ぎ面の違いによる強度比較が目的であるため、断面形状は通常より大きくした
  • 鉄筋の被りや組み方は通常通りとした
図6 曲げせん断実験用試験体図

5.3.2 引抜き実験用試験体の概要(図7)

  • 打継ぎ面の違いによる強度比較が目的であるため、断面形状は通常断面より大きくしたが、鉄筋のかぶりや組み方は通常通りとした
  • コンクリートの破壊強度・性状の確認が目的のため、アンカーボルトは一般的なZマークアンカーボルトより高強度品を使用した
図7 引抜き実験用試験体図

5.4 加力·計測装置

5.4.1 曲げせん断実験用試験体

加力装置・計測計画を図8に、加力状況を写真19に示します。

  • 図8 加力装置と計測計画
  • 写真19 加力状況

5.4.2 引抜き実験用試験体

加力装置・計測計画を図9に、加力状況を写真20に示します。

  • 図9 加力装置と計測計画
  • 写真20 加力状況

5.5 実験結果

ご指導頂いた宮内教授による実験結果の考察は以下の通りです。

5.5.1 曲げせん断実験

図11に各試験体の荷重-変位曲線を重ねて示します(縦軸は載荷した荷重、横軸は中央部のたわみ変位(図10における変位計①の値))。また、写真21に各試験体の最終破壊状況を示します。
曲げせん断実験より以下のことが分かりました。

  1. 各試験体の荷重-変位関係は、荷重60kNまでほぼ同じであり、初期剛性はほぼ同等であった。
  2. 最大荷重は80~95kNであり、各試験体ともその後、荷重低下した。Mat基礎の最大荷重は一体打ちの試験体より大きくなった。
  3. 各試験体とも加力点下部において、曲げひび割れが発生した。

以上、曲げせん断実験の結果、Mat工法による試験体は、一体打ちの試験体に対し同等以上の構造性能を示しました。

  • A) 一体打ち
  • B) 二度打ち
  • C) Mat基礎

写真21 最終破壊状況(曲げせん断試験体)

図10 荷重-変位曲線(曲げせん断実験)

5.5.2 引抜き実験

 図11に各試験体の荷重-変位曲線を重ねて示します(縦軸は引抜荷重、横軸は試験体上部の鉛直変位(上方への変位,図11における変位計②と③の平均値))。また、写真22にMat工法試験体の最終破壊状況を示します。引抜き実験より以下のことが分かりました。

  1. 試験体の初期剛性はほぼ同しであった。
  2. 水平打継ぎの試験体は、30kN付近より剛性が低下し、50kN付近より剛性がほぼゼロとなった。水平打継ぎに沿ったひび割れが観察された。
  3. 一体打ちの試験体およびMat工法の試験体は、50kN付近より剛性が低下し、ほぼ同じ荷重-変位関係を示した。
  4. Mat工法試験体の最終破壊は、写真14-Cに示すように最終的にはMat工法打継ぎ部ではなく水平断面でひび割れが発生し、Mat基礎の影響は見られなかった。
  • A) 一体打ち
  • B) 二度打ち
  • C) Mat基礎

写真22 最終破壊状況(引抜き試験体)

図11 荷重-変位曲線(引抜き実験)

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